問い合わせ管理システムを入れる理由の多くは「対応が回っているかどうか分からない」ことにあります。ところが、その状態を数字にする機能は製品ごとに置き場所が違い、下位プランでは使えないこともあります。ここでは現行5サービスの集計・レポート機能を公式情報で並べ、何を測れて何が測れないのかを整理します。
公開情報から確認できる測定の軸は、対応件数・対応時間・顧客の満足度の3つに分かれます。
Re:lationはダッシュボードもチケット分類による統計もスターター以上で、無料のフリープランでは対象外です。Zendeskは事前構築済みの分析ダッシュボードがSupport Teamから、クイックレポートはSuite Professionalからです。
満足度を測るアンケートは、Re:lationがスターター以上の機能、楽楽自動応対はオプションとして案内されています。
yaritoriはレポートの閲覧が管理者権限に紐づきます。誰が数字を見るかも、契約前に決めておく項目です。
測れるのは件数・時間・満足度の3つ
「対応品質」という言葉は広く、そのままでは設定できません。各社が公開している機能説明を読むと、実際に製品が出せる数字は次の3種類に収まります。
| 軸 | 分かること | 公式の説明で使われている表現 |
|---|---|---|
| 対応件数 | 誰がどれだけ処理したか。残件がどれだけあるか | 「各担当者が、指定した期間内にどのくらいメールを対応したのか、処理メールがあと何件残っているのか」(メールワイズ) |
| 対応時間 | 1件にどれだけかかっているか | 「各ユーザの対応件数や所要時間を表示するダッシュボード機能」(Re:lation) |
| 顧客の満足度 | 受け取った側がどう評価したか | 「メール対応後に顧客満足度を調査するアンケートを送信できる」(楽楽自動応対) |
| 内容の傾向 | 何についての問い合わせが多いか | 「業務に合わせて任意のカテゴリを作成し、メール対応時に選択することで、お問い合わせ傾向を分析できます」(メールワイズ) |
最後の「内容の傾向」は品質そのものではありませんが、件数が増えた原因を切り分けるために要ります。3つの軸だけを見ていると、対応が遅いのか、そもそも問い合わせが増えたのかを区別できません。
5サービスで測れること
各社が公開している機能ページの記述を、同じ表に並べます。「記載は確認できず」は、今回参照した範囲でその記述が見当たらなかったという意味です。
| サービス | 機能名 | 測れる内容 | プラン・権限の条件 |
|---|---|---|---|
| メールワイズ | 集計レポート | 担当者別の対応件数と残件数、日別、メールの種別、任意カテゴリ別の傾向 | コース別の制限の記載は確認できず(コース差はメールアドレス数とアプリケーション数) |
| yaritori | レポート | 誰がどれくらい対応しているか、問い合わせ内容の分析、応対件数の集計、業務負担の可視化 | レポートの閲覧は管理者権限 |
| Re:lation | ダッシュボード/チケット分類による統計/対応アンケート | 各ユーザの対応件数と所要時間、案件ごとの件数と対応状況、対応品質のアンケート調査と分析 | いずれもスターター・ビジネス・プロ・エンタープライズ(フリーは対象外) |
| Zendesk | 事前構築済みの分析ダッシュボード/クイックレポート | 公式の料金ページでは機能名までの記載 | ダッシュボードはSupport Teamから、クイックレポートはSuite Professionalから |
| 楽楽自動応対 | 集計レポート/お客様アンケート | 担当者ごとの対応件数と対応時間、問い合わせ内容の傾向分析、顧客満足度アンケートの回答集計 | 集計レポートは機能一覧の標準側、お客様アンケートはオプション |
件数はいちばん先に偏りが出る
3つの軸のうち、最初に手をつけるべきは件数です。導入直後に必ず出てくるのが、特定の担当者に作業が寄っている状態だからです。
メールワイズは集計レポートについて「メール・電話履歴・訪問履歴などのデータをワンクリックで集計、グラフ表示することができます。担当者や日別、メールの種別など任意の項目で集計できるので、対応の傾向を把握できます。また、特定の担当者に作業が偏らないように、担当者の作業を客観的に把握することで対応を効率化できます。」と説明しています。件数の集計は、評価のためというより配分の是正のための道具だという位置づけです。
実際の画面では、担当者の一覧に対して処理残件数と送信件数が横棒で並びます。誰に何件たまっているかが一目で分かるため、数字を読み解く前段の集計作業がいりません。

Re:lationは同じ観点を「アサイン状況確認」という別の機能でも用意しており、誰がどれくらい案件を抱えているのかをひと目で確認できるとしています。こちらは全プランで使えます。振り返りのための集計はプランで切られていても、いま詰まっている場所を見るだけなら下位プランでも足りるという構成です。
時間を測れるサービスは限られる
件数に比べると、時間を出せると明記しているサービスは多くありません。今回の範囲では、Re:lationが「各ユーザの対応件数や所要時間を表示するダッシュボード機能」、楽楽自動応対が「担当者ごとの対応件数や対応時間から問い合わせ内容の傾向分析まで」と書いています。
時間を測る目的は、遅い担当者を見つけることではありません。1件あたりの所要時間が長い問い合わせの型を見つけて、テンプレートやナレッジで潰す材料にすることです。所要時間だけを目標値にすると、調べるべきものを調べずに返す方向へ圧力がかかります。
「初回応答までの時間」を測れるかは、必ず自分で確かめる
対応品質の指標としてよく挙がるのは初回応答時間ですが、今回参照した各社の公開ページでは、この名前の指標を出せると明記しているものを確認できませんでした。所要時間や対応件数という表現までは書かれていても、どの時点からどの時点までを測るのかまでは公開されていません。
この項目を重視するなら、トライアル中に実際のレポート画面を開いて、出せる集計軸を確認するのが確実です。無料トライアルの使い方で、期間ごとに何を確かめるかを整理しています。
満足度は「送る仕組み」があるかで決まる
件数と時間は製品側が自動でためてくれますが、満足度だけは顧客に聞かないと手に入りません。そのため、アンケートを送る機能が製品に付いているかどうかで、測れるかどうかが決まります。
Re:lationは「対応アンケート機能」を、対応品質のアンケート調査から分析までができる機能として掲載しており、対応プランはスターター・ビジネス・プロ・エンタープライズです。フリープランには入っていません。
楽楽自動応対は「お客様アンケート」をオプションとして案内し、「メール対応後に顧客満足度を調査するアンケートを送信できるため、対応に対するお客様の評価を可視化できます。満足度の傾向を把握することで、チーム全体の対応品質の改善や平準化にもつなげることが可能です。」としています。同社は品質に関わる機能を「応対品質の向上」というくくりで整理しており、AIによる返信案の自動生成、送信前のダブルチェック(申請・承認)、テンプレート、お客様アンケートの4つを並べています。

誰がその数字を見られるか
測れることと、見たい人が見られることは別です。yaritoriは権限を管理者・メンバー・閲覧者の3区分に分けており、レポートの閲覧は管理者ができることの一覧に入っています。現場のリーダーに数字を見せたい場合、そのリーダーを管理者にするのか、管理者が定期的に共有するのかを決めておく必要があります。管理者はプランや請求先情報の変更もできる権限なので、単に数字を見せたいという理由だけで配るのは避けたほうが無難です。
楽楽自動応対は「操作権限」として、メール送信・閲覧・エクスポートなどをユーザーごとに細かく設定・管理できるとしています。エクスポートを権限で分けられる設計なら、集計の作業を一部のメンバーに限定することもできます。
Re:lationはCSVエクスポートを全プランで使えるとしており、メールや応対メモのデータを外へ出せます。製品内のダッシュボードが下位プランで使えない場合でも、データを出して自分たちで集計するという逃げ道はあることになります。ただし、手作業の集計は続きません。続けるつもりなら、最初から製品側で出せるプランを選ぶほうが結果的に安く付きます。
測る前に決めておく3つ
図1 数字を出す前に合意しておくこと
何のために測るか
配分の是正なのか、教育の材料なのか、外部への報告なのか。評価に直結させると数字が歪みます。件数を競わせると、調べずに返す対応が増えます。
どの単位で見るか
担当者別か、窓口(メールアドレス)別か、問い合わせの種類別か。メールワイズの任意カテゴリのように、分類を先に決めないと後から遡れない項目があります。
どれくらいの頻度で見るか
毎日見る数字と、月に一度でよい数字は違います。残件数は日次、傾向分析は月次、といった整理をしておくと、レポートを開く習慣が続きます。
特に1つ目が効きます。件数を担当者の評価に直結させると、簡単な問い合わせを取り合い、面倒な案件が放置される方向へ動きます。公式の説明でも、メールワイズは偏りの発見、楽楽自動応対は平準化という言葉を使っており、個人の順位付けを目的には置いていません。
測った数字をどう使うか
図2 数字が出たあとの手順
- 偏りを直す 担当者別の残件数を見て、特定の人に寄っていれば割り当てを変えます。ここは数字が出たその日にできます。
- 型を見つける 所要時間が長い問い合わせを分類し、共通する型を探します。カテゴリを設定していれば、この段階で集計だけで見つかります。
- 型をテンプレートにする 見つけた型に対して返信テンプレートやナレッジを用意します。楽楽自動応対はテンプレートを「対応の質をチームで均一化できる」機能として説明しています。
- 送信前の確認を足す 内容のばらつきが問題なら、承認フローを入れます。Re:lationは承認機能を全プランで、楽楽自動応対はダブルチェック(申請・承認)を応対品質の機能群に置いています。
- 満足度で答え合わせをする アンケートを送れる契約なら、施策の前後で回答傾向を比べます。件数や時間が改善しても満足度が動かないなら、測っている軸が目的とずれています。
各サービスの料金と契約条件は問い合わせ管理システム比較5選に、権限やアクセス制限の条件は共有メールのセキュリティ要件にまとめています。プラン別の細かい条件はRe:lationの料金とプランやメールワイズの料金と条件で確認できます。レポートの閲覧権限が絡むyaritoriはyaritoriの料金と契約条件、集計機能が標準側にある楽楽自動応対は楽楽自動応対(旧メールディーラー)の料金にまとめています。
よくある質問
対応品質は何で測ればよいですか。
公開されている機能から測れるのは、対応件数、対応時間、顧客満足度の3つです。加えて、問い合わせ内容の傾向を分類しておくと、件数が動いた理由を切り分けられます。
無料プランでも集計できますか。
Re:lationのダッシュボードとチケット分類による統計はスターター以上の機能で、フリープランは対象外です。ただしアサイン状況確認とCSVエクスポートは全プランで使えます。
初回応答までの時間は測れますか。
今回参照した各社の公開ページでは、この名前の指標を出せるという記述を確認できませんでした。所要時間や対応件数までは書かれていますが、計測の起点と終点は公開されていません。必要ならトライアル中にレポート画面で確認してください。
顧客満足度はどうやって測りますか。
アンケートを送る機能が要ります。Re:lationは対応アンケート機能をスターター以上で、楽楽自動応対はお客様アンケートをオプションとして案内しています。
レポートは誰でも見られますか。
yaritoriはレポートの閲覧を管理者の権限に含めています。楽楽自動応対はメール送信・閲覧・エクスポートなどをユーザーごとに設定できる操作権限を用意しています。見せる範囲は契約前に決めておくほうが安全です。
担当者ごとの件数を評価に使ってよいですか。
公式の説明は、偏りの発見や品質の平準化を目的に挙げており、個人の順位付けには触れていません。件数を評価に直結させると、手間のかかる案件が避けられる方向に動きます。
まとめ
問い合わせ対応を数字にするとき、公開情報から確認できるのは対応件数・対応時間・顧客満足度の3つです。件数はどのサービスでも測れますが、時間を出せると明記しているのはRe:lationと楽楽自動応対、満足度を測るアンケートはRe:lationのスターター以上と楽楽自動応対のオプションでした。
測る機能はプランで切られます。Re:lationはダッシュボードも統計もフリープランでは使えず、Zendeskはクイックレポートを最上位から2番目のSuite Professionalに置いています。料金を比べる前に、どの数字を見たいのかを決めておくと、選べるプランがそのまま絞られます。
条件は改定されることがあるため、契約の前に各社の公式ページで最新の表示をご確認ください。
参照した一次情報
- サイボウズ「メールワイズ 集計レポート」https://mailwise.cybozu.co.jp/functions/report/(ワンクリックでの集計とグラフ表示、担当者・日別・メール種別での集計、担当者別の対応件数と処理残件数、任意カテゴリによる傾向分析)/同「費用」https://mailwise.cybozu.co.jp/price/(スタンダードコースとプレミアムコースの差はメールアドレス数とメールアプリケーション数) 2026年10月1日確認
- インゲージ「Re:lation 機能一覧」https://ingage.jp/relation/features/(ダッシュボード・チケット分類による統計・対応アンケート機能の対応プラン、アサイン状況確認とCSVエクスポートと承認機能は全プラン)/同「料金プラン」https://ingage.jp/relation/pricing/(フリープランの位置づけ)2026年10月1日確認
- Onebox「yaritori 機能」https://yaritori.jp/function/(レポート機能で誰がどれくらい対応しているか、応対件数の集計、業務負担の可視化)/同「ユーザーごとの権限管理はできますか?」https://yaritori.jp/faq/security-2/(管理者・メンバー・閲覧者の3区分と、レポートの閲覧が管理者に含まれること)2026年10月1日確認
- Zendesk「Zendeskの料金プラン」https://www.zendesk.co.jp/pricing/(Support Teamの事前構築済みの分析ダッシュボード、Suite Professionalで追加されるクイックレポート)2026年10月1日確認
- ラクス「楽楽自動応対 機能紹介」https://www.rakus.co.jp/rakurakucloud/jidootai/function/(集計レポートで担当者ごとの対応件数や対応時間と傾向分析、お客様アンケートはオプション、操作権限でメール送信・閲覧・エクスポートをユーザーごとに設定)/同「品質のばらつきをなくしたい」https://www.rakus.co.jp/rakurakucloud/jidootai/function/quality-standardization/(応対品質の向上として自動生成・ダブルチェック・テンプレート・お客様アンケートの4機能)2026年10月1日確認
表示内容は2026年10月1日に各社の公式サイトで確認したものです。機能とプランの対応は変更されることがあります。
