クラウドPBXから110・118・119はかけられるか|総務省が定める緊急通報の義務と、5サービスの公開情報を突き合わせて確認【2026年】

クラウドPBXから110・118・119へ発信できるかを扱うことを示したアイキャッチ

オフィスの電話をクラウドPBXに置き換えるとき、料金や内線数の比較に気を取られて見落とされやすいのが110番・118番・119番への発信です。結論から言うと、今回調べた5サービスのうち、公開ページで「かけられる」と明記しているものはありませんでした。この記事では、総務省が定める緊急通報の義務と、各社が公開している制約を突き合わせて、代わりに何を用意すべきかを整理します。料金の比較はクラウドPBX比較5選にまとめています。

先に結論

総務省は、電気通信事業者が緊急通報(110・118・119)を扱う際に3つの機能を持つことを義務付けています。接続する機能、発信者の位置情報等を通知する機能、回線を保留または呼び返し等を行う機能です。

この義務は「緊急通報を扱う際」のものです。そのため、緊急通報を提供しないという形でサービスを設計することは妨げられていません。実際に、クラウドPBXの多くは緊急通報を提供していません。

トビラフォン Cloud は接続可否番号一覧で110・118・119をいずれも「×」と公開しています。ナイセンクラウドは「110、118、119など地域性のある緊急回線には電話をかけることが出来ません」と明記。MOT/TEL は「光回線なしプラン」で1から始まる特番へ発信できないとしています。Arcstar Smart PBX は緊急通報等への発信に制約があるとし、携帯電話や固定回線を別に用意するよう案内しています。

つまりクラウドPBXだけに一本化すると、緊急通報の経路が社内から消えます。携帯電話や固定回線を残す設計が必要です。

制度上、緊急通報には3つの機能が義務づけられている

総務省の安全・信頼性の向上のページにある緊急通報の機能の説明。電気通信事業者は、緊急通報(110,118,119)を扱う際には次の機能を持つことを義務付けられていますとして、管轄の緊急通報受理機関(警察、海上保安庁、消防)へ接続する機能、発信者の位置情報等を通知する機能、回線を保留または呼び返し等を行う機能の3つが箇条書きで並んでいる公式画面
出典:総務省「安全・信頼性の向上|緊急通報の機能」(2026年9月27日確認)

総務省は、緊急通報を扱う電気通信事業者に対して次の3つの機能を義務付けています。

表1:緊急通報を扱う事業者に義務づけられている機能
機能 内容
接続する機能 管轄の緊急通報受理機関(警察、海上保安庁、消防)へ接続する
位置情報等を通知する機能 発信者の位置情報等を緊急通報受理機関へ送信する。アナログ電話・IP電話の場合は契約者等の住所が、電話番号および契約者名とともに受付台等へ送信される
回線保留・呼び返しの機能 回線を保留または呼び返し等を行う

この義務化には経緯があります。総務省によれば、緊急通報時の位置情報等通知機能等はNTTのアナログ電話等では従来から実施されていましたが、携帯電話やIP電話の普及に伴って同様の機能が求められるようになりました。平成15年頃から検討が始まり、平成16年に携帯電話、平成17年にIP電話についての導入方針が決定され、平成19年4月1日から位置情報等通知機能等が義務化されています。根拠となる事業用電気通信設備規則は平成18年1月5日に公布、平成19年4月1日に施行されました。

位置情報の通知に、利用者側の操作や特別な契約は必要ありません。総務省のFAQには「利用者が緊急通報時に特別な操作を行ったり、電気通信事業者と特別な契約を結んだりする必要はありません」と書かれています。逆に、相手の番号の前に184を付けて発信すると、緊急通報であっても電話番号や位置情報等は通知されません。

それでもクラウドPBXから110・119にかけられないことがある理由

前項の義務は「緊急通報(110,118,119)を扱う際には」という条件付きです。裏を返すと、緊急通報を扱わないサービスとして設計すれば、この義務は発生しません。位置情報の通知が要件に入っていることが、そのまま理由になります。

緊急通報では、アナログ電話・IP電話の場合、位置情報として契約者等の住所が電話番号および契約者名とともに受付台へ送られます。つまり、番号と設置場所が1対1で結びついていることが前提です。クラウドPBXは、同じ番号をスマートフォンやPCに割り当て、拠点をまたいで持ち歩ける仕組みです。発信者が実際にどこにいるかと、契約上の住所は一致しません。この構造が、緊急通報の要件とかみ合いません。

緊急通報の前提と、クラウドPBXの構造

緊急通報が前提にしていること

番号と契約者等の住所が対応していること。受理機関は通報と同時にその情報を受け取ります。

クラウドPBXがしていること

交換機を事業者のサーバーに置き、同じ番号を場所を問わず端末で受け発信できるようにすること。

かみ合わない点

発信者の実際の所在地が、契約上の住所と一致しません。誤った住所へ消防車や救急車が向かうおそれがあります。

5サービスの公開情報ではどう書かれているか

表2:緊急通報についての各社の公開情報(2026年9月27日確認)
サービス 公開ページの記載 110・118・119の扱い
トビラフォン Cloud 接続可否番号一覧で番号ごとに可否を公開 110(警察通報)×、118(海上保安)×、119(消防通報)× といずれも接続不可
ナイセンクラウド Q&Aの「電話がかけられないところはありますか?」 「110、118、119など地域性のある緊急回線には電話をかけることが出来ません」
MOT/TEL よくある質問の「110番や119番に発信できますか?」 「光回線なしプラン」の場合、110・119などの1からはじまる特番、0120・0990などの電話サービス、ポケベルへ発信できない
Arcstar Smart PBX 料金ページの「留意事項」 緊急通報等への発信には制約があり、必要に応じて携帯電話やNTT東日本・西日本などの固定回線を用意するよう案内。発信不可番号の詳細は営業担当に確認
BIZTEL ビジネスフォン よくある質問・利用規約を確認 緊急通報に関する記載を確認できず

書き方には差がありますが、「かけられる」と明記しているサービスは1つもありませんでした。MOT/TEL のように「光回線なしプラン」という条件付きで示しているケースもあり、構成によって扱いが変わる可能性はあります。BIZTEL については公開ページから読み取れなかったため、「記載なし」と書いています。かけられるとも、かけられないとも判断していません。

導入前に確認すべきなのは、「緊急通報はかけられますか」ではなく「かけられない番号の一覧をください」です。Arcstar Smart PBX は「発信不可番号の詳細は弊社営業担当者にご確認ください」と案内しており、一覧が存在することを前提にしています。見積もりの段階で書面として受け取ってください。

接続可否番号一覧が示しているもの

トビラフォンCloudの接続可否番号一覧の1XY系の表。番号・サービス・可否・備考の4列で、100番通話×、102非常・緊急扱い電話×、104番号案内×、110警察通報×、113故障受付×、117時報×、118海上保安×、119消防通報×、142ボイスワープ×、171災害用伝言ダイヤル×、177天気予報×、188消費者ホットライン×、189児童相談所全国共通ダイヤル×と並び、市外局番+177の天気予報、184発信電話番号表示拒否、186発信電話番号表示送出だけが○と表示されている公式画面
出典:トビラシステムズ「接続可否番号一覧|クラウドPBX トビラフォンCloud」1XY系(2026年9月27日確認。ページ上部の固定メニューを非表示にして撮影)

この一覧は、緊急通報だけの話ではないことを教えてくれます。1から始まる3桁番号のほとんどが「×」で、○が付いているのは市外局番+177(天気予報)、184(発信電話番号表示拒否)、186(発信電話番号表示送出)の3つだけです。

表3:緊急通報以外に使えなくなる主な番号(トビラフォン Cloud の例)
番号 サービス 可否 業務上の影響
104 番号案内 × 番号を調べる用途が使えない
113 故障受付 × 回線の故障申告を別の手段で行う必要
171 災害用伝言ダイヤル × 災害時の安否確認の経路が1つ減る
177 天気予報 × 市外局番+177なら○
188 消費者ホットライン × 消費生活相談の窓口へつながらない
189 児童相談所全国共通ダイヤル × 福祉・教育分野の事業者では影響が出うる
184/186 発信番号の非通知/通知 ○ 通常どおり使える

171の災害用伝言ダイヤルが使えない点は、BCP(事業継続計画)を作っている組織では確認が要ります。ナイセンクラウドも、050番号からはフリーダイヤル(0120・0800)とナビダイヤル(0570)が利用できないと明記しています。取引先のサポート窓口が0120や0570しかない場合、会社の電話からかけられなくなります。

携帯電話の位置情報とは仕組みが違う

「携帯電話からかければいい」と考えるとき、通知される位置情報の中身も知っておくと判断が変わります。総務省によれば、携帯電話の場合の位置情報は、GPS位置情報通知対応端末でGPSを利用可能なときはGPS測位による位置情報が、それ以外のときは基地局の場所等から算出される位置情報が、電話番号とともに受付台等に送信されます。アナログ電話・IP電話で送られる「契約者等の住所」とは、そもそも性質が違います。

総務省は、携帯電話からの緊急通報について「移動中や外出先からの通報が想定され、通報者が現在地がわからない場合も多くあるため、自動的な位置情報通知は緊急通報でも重要な機能となっています」と説明する一方で、「GPSの受信状況や携帯電話の電波状況によっては、正確な位置を通知できない可能性もありますので、緊急通報の際には、口頭でも現在地や目標物等を伝えるようにしてください」とも記しています。

位置情報は、利用者が特別な操作をしなくても、各電気通信事業者内の位置情報通知サーバから、緊急通報の音声とは別の専用ネットワーク(IP-VPN網等)経由で受付台等へ送信されます。音声とは別の経路で送られているという点が、この仕組みの要です。クラウドPBXがこの経路を持っていなければ、通報を受けた側には場所が届きません。

代わりに何を用意するか

緊急通報の経路を残す手順

1

かけられない番号の一覧を事業者から受け取る

緊急通報だけでなく、104・113・171・188・0120・0570まで含めて確認します。公開ページに一覧があるとは限りません。

2

社用携帯を残すか、固定回線を1本残す

Arcstar Smart PBX は「必要に応じて携帯電話や、NTT東日本・NTT西日本などの固定回線をご用意ください」と明記しています。全社の電話をクラウドPBXに寄せきらない設計にします。

3

どの端末から緊急通報するかを決めて周知する

「会社の電話からは110・119がかけられない」ことを知らない従業員が、いざというときに時間を失います。席に案内を貼る、入社時の説明に入れるなどの手当てが要ります。

4

通報時に伝える住所を用意しておく

クラウドPBX以外の手段で通報する場合も、位置情報が自動で正確に通知されるとは限りません。消防庁は「消防車・救急車が向かう住所」を必ず聞くとしています。拠点の住所と目印を掲示しておきます。

5

つながらないときの行動を決めておく

消防庁は、通信・通話障害で119番がつながりにくい場合の対応として、公衆電話を利用する、近隣の方やお店に119番通報を依頼する、消防署所に直接駆け込むことを挙げています。

消防庁が案内している「つながらないとき」の行動

総務省消防庁は、携帯電話等から119番につながらないときの対応を公開しています。「慌てることなく、公衆電話を利用するか、周囲に助けを求めて通報を!」という見出しで、通信・通話障害が発生して119番通報がつながりにくい場合は、公衆電話を利用する、近隣の方やお店に119番通報を依頼する、消防署所に直接駆け込む、といった対応を求めています。公衆電話の場所はNTT東日本・NTT西日本のサイトで検索できることも案内されています。

通報を受けた側が必ず聞くことも公開されています。ひとつは「消防車・救急車が向かう住所」で、住所がわからない場合は近くの大きな建物や交差点など目印になるものを伝えるよう求めています。もうひとつは「119番通報されている方のお名前と連絡先」で、到着までに場所の確認等で問い合わせることがあるためです。

消防庁は「119番がつながるかどうか確認するための119番通報はお控えいただきますようお願いいたします」とも記載しています。クラウドPBXの導入後に「かけられるか試してみる」という検証はしないでください。かけられるかどうかは、事業者に書面で確認する方法で判断します。

よくある質問

クラウドPBXから110番や119番はかけられますか。
今回調べた5サービスのうち、公開ページで「かけられる」と明記しているものはありませんでした。トビラフォン Cloud は接続可否番号一覧で110・118・119をいずれも「×」と公開し、ナイセンクラウドは「110、118、119など地域性のある緊急回線には電話をかけることが出来ません」と明記しています。MOT/TEL は「光回線なしプラン」の場合に1から始まる特番へ発信できないとしています。
なぜかけられないのですか。
緊急通報には、管轄の受理機関へ接続する機能に加えて、発信者の位置情報等を通知する機能が義務づけられています。アナログ電話・IP電話では契約者等の住所が位置情報として送られる仕組みで、番号と設置場所が対応していることが前提です。クラウドPBXは同じ番号を場所を問わず使える仕組みのため、この前提と合いません。
緊急通報を扱わないサービスは違法ではないのですか。
総務省が示している義務は「緊急通報(110,118,119)を扱う際には」という条件付きのものです。緊急通報を提供しない形でサービスを設計すること自体は、この規定では妨げられていません。利用者側が、別の経路を用意する必要があります。
緊急通報のほかに使えなくなる番号はありますか。
サービスによります。トビラフォン Cloud の接続可否番号一覧では、104(番号案内)、113(故障受付)、171(災害用伝言ダイヤル)、188(消費者ホットライン)、189(児童相談所全国共通ダイヤル)なども「×」です。ナイセンクラウドは050番号からフリーダイヤル(0120・0800)とナビダイヤル(0570)が利用できないとしています。
位置情報を通知したくない場合はどうすればいいですか。
総務省のFAQによれば、184を頭に付けて発信すれば、緊急通報時であっても電話番号や位置情報等は通知されません。「電気通信事業における個人情報保護ガイドライン」に基づき、利用者の意思を尊重して選択できるようにしているものと説明されています。
導入前に何を確認すればいいですか。
「緊急通報はかけられますか」ではなく、発信できない番号の一覧を書面で受け取ってください。緊急通報、104・113・171・188、0120・0570まで含めて確認します。そのうえで、社用携帯か固定回線を残す設計にし、従業員へ周知します。
サービスごとの詳しい条件はどこで見られますか。
各サービスの料金と条件を個別にまとめています。トビラフォン Cloud、ナイセンクラウド、MOT/TEL(モッテル)、Arcstar Smart PBX、BIZTEL ビジネスフォン。5サービスの比較はクラウドPBX比較5選にあります。市外局番の扱いはクラウドPBXで03・06の市外局番を使う条件で扱っています。

出典(総務省・消防庁の資料と各社の公開ページ。すべて2026年9月27日に確認)

  • 総務省「安全・信頼性の向上|緊急通報の機能」https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/net_anzen/hijyo/tuho.html(緊急通報を扱う際に義務づけられている3機能、制度化までの経緯と平成19年4月1日からの位置情報等通知機能等の義務化、事業用電気通信設備規則の公布日・施行日、アナログ電話・IP電話では契約者等の住所が位置情報として送信される旨、特別な操作や契約が不要である旨、184を付けた場合の扱い)
  • 総務省消防庁「119番緊急通報」https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/kyukyumusen_kinkyutuhou/119.html(携帯電話等から119番につながらないときの対応、公衆電話の場所の検索先、通報時に必ず聞かれること、つながるかどうか確認するための119番通報を控える旨)
  • トビラシステムズ「接続可否番号一覧|クラウドPBX トビラフォンCloud」https://tobilaphone.com/biz/cloud/access/(1XY系・0A0系・0AB0系・00XY系の番号ごとの接続可否、110/118/119がいずれも×である旨、184/186および市外局番+177が○である旨)
  • アイティオール「ナイセンクラウド Q&A」https://naisen.jp/qanda/(Q10「電話がかけられないところはありますか?」の回答、050番号からのフリーダイヤル・ナビダイヤルの扱い)
  • バルテック「MOT/TELよくある質問」https://www.mot-net.com/mottel/mottel_faq(「110番や119番に発信できますか?」の回答、光回線なしプランでの発信不可番号)
  • NTTドコモビジネス「料金|Arcstar Smart PBX」https://www.ntt.com/business/services/voice-video/voip/smartpbx/charge.html(留意事項の緊急通報への発信の制約、携帯電話や固定回線の用意を求める案内、発信不可番号の詳細を営業担当に確認する旨)
  • BIZTEL「よくある質問」https://biztel.jp/guide/faq/および「利用規約」https://biztel.jp/agreement/(いずれも緊急通報に関する記載を確認できなかった)

あわせて、契約の締め日と日割りはクラウドPBXの契約期間と解約で扱っています。緊急通報の扱いは制度側もサービス側も変わります。この記事の表を根拠にせず、契約前に事業者へ発信できない番号の一覧を求めてください。この記事は、公開ページに記載のなかったサービスについて「かけられる」「かけられない」のいずれとも判断していません。緊急通報が実際にかけられるかどうかは、必ず事業者に確認してください。

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