バーチャルオフィスの住所で法人口座が作れるかどうかは、事業者側の説明を額面どおりに読むと判断を誤ります。各社が「開設実績」として掲げている表は、口座が開設できた件数ではなく、口座開設に関する郵便物が届いた実績を指していることがあります。一方で、銀行が何を確認するかは法律で決まっており、そこから逆算すれば準備すべきものははっきりします。2026年10月17日に、e-Gov法令検索の犯罪による収益の移転防止に関する法律と、レゾナンス・ナレッジソサエティ・Karigo・DMMバーチャルオフィスの公式ページで確かめました。
結論(2026年10月17日時点で確認)
- 銀行が確認する項目は法律で決まっている。犯罪収益移転防止法第4条第1項が、本人特定事項・取引を行う目的・事業の内容・実質的支配者の本人特定事項の4つを挙げている
- 法人の本人特定事項は「名称及び本店又は主たる事務所の所在地」。住所そのものが確認対象になる
- 「開設実績」の表記には注意。レゾナンスの一覧は、記号の凡例で◎と○を「口座開設に関する郵便物が届いた実績」と定義している
- Karigoは個人名契約だと口座開設関連の郵便物を受け取れない。法人・屋号名契約で法人・屋号名宛てなら受け取れる
- DMMバーチャルオフィスのミニマムプランは、銀行口座がNG例に入っている
- ナレッジソサエティには法人口座開設保証制度がある。開設できず退会する場合に入会金・保証金・2か月分の基本料金を返金。100%保証ではなく条件は非公開
銀行が何を確認するかは法律で決まっている
法人口座の開設時に銀行が根掘り葉掘り聞いてくるのは、担当者の裁量ではありません。犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)の第4条第1項が、特定事業者に対して取引時確認を義務づけているためです。
| 号 | 確認する事項 | 法人の場合に問われること |
|---|---|---|
| 第1号 | 本人特定事項 | 名称及び本店又は主たる事務所の所在地 |
| 第2号 | 取引を行う目的 | 口座を何のために使うのか |
| 第3号 | 事業の内容 | 何をして収益を得ているのか |
| 第4号 | 実質的支配者の本人特定事項 | 事業経営を実質的に支配できる者がいる場合、その者の氏名・住居・生年月日 |
第1号に「法人にあっては名称及び本店又は主たる事務所の所在地をいう」と書かれている点が、バーチャルオフィスと直接つながります。住所は確認対象そのものなので、登記上の住所と実際の活動実態が一致して見えるかが論点になります。

「開設実績」という表記が何を指しているか
バーチャルオフィス各社は、法人口座の開設しやすさを訴求材料にしています。ただし掲載の仕方は会社ごとに違い、同じ「実績」でも意味が変わります。
レゾナンスは「レゾナンスバーチャルオフィスでの法人口座開設実績」というページで、銀行ごとに4つの記号を付けています。ページ冒頭の凡例を読むと、記号の意味はこうです。二重丸は「実際ご利用いただいているレゾナンス会員様宛に銀行口座開設に関する郵便物が頻繁に届いています」、丸は「郵便物が到着した実績がございます」、三角は「現時点で開設実績はありませんが、銀行に問い合わせしたところ『バーチャルオフィスだから口座開設できないことはない。』と回答いただきました」、バツは「現時点では『開設不可』とのことでした」。
二重丸と丸は、郵便物の到着実績を指している。口座が開設できた件数ではないと凡例に書かれている
三角は銀行への問い合わせ回答。開設実績はないと明記されている
ページ名の「開設実績」だけで読まず、凡例まで開いて記号の定義を確かめる
2026年10月17日時点でメガバンクの欄に並んでいるのは、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、ゆうちょ銀行、りそな銀行、横浜銀行、湘南信用金庫です。ネットバンク・地方金融機関の欄には、GMOあおぞらネット銀行、ドコモSMTBネット銀行、PayPay銀行、楽天銀行、新生銀行、イオン銀行、東京スター銀行、きらぼし銀行が並びます。どの銀行にどの記号が付いているかは時期で変わる可能性があるため、判断材料にするなら申し込み直前に同社のページで確認してください。

ナレッジソサエティは別のアプローチで、実際に口座を開設した会員のインタビューを記事として公開しています。GMOあおぞらネット銀行、りそな銀行、三菱UFJ銀行での開設例が挙げられており、提出した資料として事業計画書、過去の取引メールの写し、発注書、口座明細、独立以来の全確定申告書類、既存クライアントとの契約書類などが語られています。こちらは同社が自社サイトで公開している会員の話であり、第三者による検証ではありません。
Karigoはそもそも判断を保留しています。よくある質問の「弊社住所で銀行口座開設できますか?」への回答は「口座開設に関しましては作成される銀行、および担当者によって対応が異なりますので作成をご検討されている銀行へお問い合わせいただくことをお勧めします」です。
口座開設の書類を受け取れないプランがある
意外と見落とされるのが、口座開設に関する郵便物をそのバーチャルオフィスで受け取れるかどうかです。申し込んでも書類が届かなければ、手続きは止まります。
| サービス | 口座開設関連の郵便物 | 条件 |
|---|---|---|
| Karigo | 個人名契約では受け取れない | 郵便物取扱のページで「個人の利用の場合で金融関連の類で請求書や明細を除くもの(クレジットカード作成、銀行口座開設関連、証券口座開設関連など)」を受取不可に挙げている。法人・屋号名契約で法人・屋号名宛てなら受け取れる |
| DMMバーチャルオフィス | ミニマムプランは住所利用がNG | FAQの利用可能範囲で、NG例に「銀行口座」が入っている。受け取れるのは返品/返送品と個人事業主の税金関連書類のみ |
| レゾナンス | 受け取れる | FAQで「銀行などから届く、転送不要の簡易書留の受け取りは可能です」。追跡記録付きのため、到着時に受取費用300円をデポジットから差し引く |
| ナレッジソサエティ | 受け取れる | 簡易書留等のサインが必要な郵便物もスタッフが代理で受け取る。手数料は無料 |
| GMOオフィスサポート | プランによる | 転送なし660円プランは法人登記・郵便物受取不可と明記されている |
転送不要の簡易書留は、金融機関が住所の実在を確かめるために使う送り方です。レゾナンスはこれを受け取れると明記していますが、デポジットの残高が足りないと不在票対応になる点に注意が要ります。残高不足のまま放置すると、銀行側からは「住所に届かない会社」に見えます。
法人口座開設保証制度の読み方
ナレッジソサエティは法人口座開設保証制度を設けています。公式ページの文言は「法人口座の開設を100%保証することはできませんが、法人口座が開設できなかったことを理由にサービスを退会される場合は、入会金・保証金・2ヶ月分の基本料金を返金いたします。条件がありますので詳しくは見学時にお問い合わせください」です。
同社のバーチャルオフィスメンバーは入会金16,500円・保証金30,000円・月額基本料金4,950円なので、返金額は最大で16,500円+30,000円+9,900円の56,400円という計算になります。返金実績については「2018年10月〜2020年4月まで実績」として0%と掲示され、よくあるご質問でも「口座開設できずに返金した実績はありません」と説明されています。集計期間が2020年4月までである点は読み落とさないほうがよいところです。
制度の条件そのものは公開されていません。「条件がありますので詳しくは見学時にお問い合わせください」とされているため、この制度を理由に選ぶなら、見学の場で適用条件を具体的に確認するのが前提になります。
宛名の登録を済ませないと、書類は差し戻される
法人口座の書類は法人名宛てで届きます。ところがバーチャルオフィス側に法人名が登録されていないと、受け取ってもらえません。レゾナンスの郵便物転送業務のご案内には「ご登録のない宛名の郵便物は返還対応となります」と書かれ、契約後に法人を設立した場合や屋号を登録した場合は申請が必要とされています。法人格(株式会社・合同会社・社団法人など)を省略せずに記入するよう求める注記も添えられています。
登録できる宛名の範囲も会社ごとに違います。レゾナンスの法人契約で受け取れるのは、法人名、代表者氏名、法人名+代表者以外の氏名や屋号等の3種類で、それ以外はオプションの追加が必要です。個人契約では屋号登録が1つまで無料で、追加は週1転送プランが1,650円/月、月1転送プランが990円/月(3つまで)です。DMMバーチャルオフィスは1アカウントにつき1屋号まで無料で、追加は1件1,650円。Karigoは屋号名追加オプションが1,100円/月です。
社名を変えたときの猶予も決まっています。レゾナンスは、履歴事項全部証明書の提出から1週間以内は旧社名での受け取りが可能で、それ以降に旧社名宛で届いた荷物は差し戻しになると案内しています。Karigoも同様に、新社名の履歴事項全部証明書の提出から1週間を過ぎると旧社名宛の荷物は差し戻すとしています。口座開設の手続き中に商号を変更する予定があるなら、この期限を押さえておく必要があります。
準備する書類を法律から逆算する
銀行の確認項目が法律で決まっている以上、準備すべきものも決まってきます。レゾナンスは自社ページで準備のポイントを整理しており、犯罪収益移転防止法第4条第1項の4項目と対応づけて読むと筋が通ります。
確認項目から逆算した準備(レゾナンスの案内と法第4条第1項を突き合わせたもの)
最後の項目は、バーチャルオフィス選びに直結します。電話転送や電話代行をオプションで付けるか、郵便物の転送頻度を上げるかという判断は、審査中の連絡に対応できるかという観点で決めると合理的です。レゾナンスは転送電話2,200円/月、ナレッジソサエティは電話転送(受信のみ)3,300円/月、Karigoはブループランに転送電話が含まれます。
申し込みの順番を決める
バーチャルオフィスで法人口座を開くまでの順番
レゾナンスも「ある金融機関で開設できなかった場合でも、別の金融機関では開設できることがあります」と書いています。1行に絞らず、ネット銀行と対面の金融機関を並行して検討しておくと、手続きが止まりにくくなります。
口座開設の書類を受け取れるかどうかは、選ぶプランで変わります。郵便物の受け取り条件まで並べた5社の一覧で確かめてください。
登記そのものの条件はバーチャルオフィスで法人登記はできるかにまとめています。各社の料金と契約条件は、GMOオフィスサポート、DMMバーチャルオフィス、レゾナンス、Karigo、ナレッジソサエティの各記事で確認できます。
よくある質問
バーチャルオフィスだと法人口座は作れませんか。作れないと決まっているわけではありません。ただし銀行は犯罪収益移転防止法第4条第1項により、本人特定事項・取引を行う目的・事業の内容・実質的支配者の本人特定事項を確認する義務を負っています。住所は本人特定事項そのものなので、事業の実態を説明できる準備が要ります。
「開設実績あり」と書かれていれば安心ですか。表記の定義を確かめてください。レゾナンスの一覧では、二重丸と丸は「口座開設に関する郵便物が届いた実績」を意味すると凡例に書かれています。開設できた件数ではありません。
最安プランでも口座開設の書類は届きますか。届かないことがあります。Karigoは個人名契約だと銀行口座開設関連の郵便物を受け取れず、DMMバーチャルオフィスのミニマムプランはNG例に銀行口座が入っています。GMOオフィスサポートの転送なし660円プランは郵便物受取そのものができません。
転送不要の簡易書留は受け取ってもらえますか。レゾナンスは受け取り可能と明記しており、到着時に受取費用300円をデポジットから差し引きます。ナレッジソサエティはサインが必要な郵便物をスタッフが代理で受け取り、手数料は無料です。
口座開設保証があれば必ず開設できますか。できません。ナレッジソサエティの制度は「法人口座の開設を100%保証することはできません」と明記したうえで、開設できず退会する場合に入会金・保証金・2か月分の基本料金を返金する内容です。条件は非公開で、見学時の確認が案内されています。
1つの銀行で断られたら終わりですか。終わりではありません。審査基準は金融機関ごとに異なり、ある金融機関で開設できなくても別の金融機関では開設できることがあるとレゾナンスも案内しています。
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