先に結論:Web会議の運用ルールで最初に決めるのは、参加のマナーではありません。誰が主催者になるかと録画が誰の場所に残るかです。この2つは会議の作り方で自動的に決まってしまうため、あとから直すのが最も面倒な部分です。
本稿は、Google が公開しているMeetの録画に関するヘルプ記事と、Microsoft・各社の公式資料の記載に基づいています。画面の名称は各社の表記に従いました。
主催者は「会議をどう作ったか」で決まる
Google Meetのヘルプには、会議の主催者が誰になるかが会議の作成方法で変わると明記されています。Googleカレンダーで会議の予定を作成した場合は、その予定を作成したユーザーが主催者になります。Google Meetのホームページや別のサービス(Gmailなど)で会議を作成した場合は、会議を開始したユーザー、またはコードを生成したユーザーが主催者になります。

この違いは、日常の会議では意識されません。ところが録画を始めた瞬間に効いてきます。録画ファイルは主催者のGoogleドライブの「Google Meet」フォルダに保存されるためです。誰が予定を作ったかによって、録画の置き場所が変わります。
運用ルールとして最初に書くべきは「定例会議の予定は誰が作るか」です。部署ごとに担当を決め、その人のドライブに録画が集まる前提で共有の設計をします。担当を決めないまま各自が予定を作ると、録画が社内のあちこちのドライブに散らばります。
録画は主催者のドライブに残る
ヘルプによれば、録画が終わると会議の主催者と録画を開始したユーザーに、録画ファイルのリンクが記載されたメールが届きます。ファイル自体は主催者のドライブの「Google Meet」フォルダに保存されます。
ここから2つの運用課題が出ます。第一に、主催者のドライブ容量です。ヘルプにも、Googleドライブに十分な空き容量があることを確認するようにという項目があります。会議を多く主催する人ほど、個人の割り当てを先に使い切ります。第二に、退職と異動です。担当者が会社を離れると、その人のドライブにある録画へのアクセスが問題になります。
対策は、録画を作った直後に共有ドライブなどの組織側の保管場所へ移す運用です。「主催者のドライブは一時置き場であり、保管場所ではない」と決めておけば、退職時に慌てずに済みます。移す担当と期限を、運用ルールに1行で書いてください。
録画に同意を求める設定は既定でオフ
Meetのヘルプには、管理者が特定の会議機能を使用する前に、すべての参加者へ明示的な同意を求められると記載されています。対象として挙げられているのは「自動メモ生成」「録画」「音声文字変換」の3つです。そして、この設定はデフォルトでオフになっており、管理者がオンにできるとされています。
つまり既定のままでは、参加者への明示的な同意の確認が入りません。録画の開始・停止時に参加者へ通知はされますが、同意を求める画面は出ないということです。社外の相手を含む会議を録画する運用があるなら、この設定をオンにするかどうかを情報システム部門と決めてください。
同意の画面では、機能をオンにして同意する場合は「開始」、オンになっている機能を使って会議に参加する場合は「参加」、機能をオンにしたあとも参加し続ける場合は「続行」、退出する場合は「退出」を選ぶと案内されています。参加者が「退出」を選べる設計になっている点も、社外向けの会議では説明しておく価値があります。
録画を開始・停止できる人を決める
| 条件 | ヘルプの記載 |
|---|---|
| 既定の状態 | デフォルトでは、主催者は会議を録画できる |
| 参加者が録画できる条件 | 主催者に録画権限がある場合のみ、参加者は会議を録画できる |
| 主催者向けの設定をオンにした場合 | 参加者は録画や文字起こしのステータスを変更できない |
| クイック停止が有効で、主催者向けの設定がオフの場合 | 組織内のユーザーは「停止」をクリックして、すべての参加者の録画を終了できる |
| 録画できる端末 | 会議の録画は、パソコンまたはAndroidデバイスでのみ可能 |
表の3行目と4行目は、組み合わせで挙動が変わる部分です。主催者向けの設定をオンにすれば参加者は録画の状態を変えられませんが、オフのままでクイック停止が有効だと、組織内の誰でも録画を止められます。「勝手に止められた」という事故は、この設定の組み合わせから起きます。
端末の制約も運用に効きます。録画はパソコンかAndroidでのみ可能とされているため、iPhoneやiPadから主催する運用では録画できません。営業が外出先から会議を主催する場合、録画の担当を社内の誰かに固定しておく必要があります。
8時間で自動的に止まる
ヘルプには、会議の録画は合計8時間まで可能で、それ以上の録画は自動的に停止すると記載されています。また、全員が会議から退出すると録画が自動的に停止するとも書かれています。
終日の研修やイベントを1本の会議で通す運用では、8時間の上限が効きます。午前と午後で会議を分ける、休憩ごとに録画を切るといった運用にしておけば、上限に当たっても失われる範囲が小さくなります。1本の長時間ファイルは、あとから見返すときにも扱いにくいものです。
字幕を録画に含める場合は、録画開始時に言語を選ぶ形です。ただし、録画をGoogleドライブで再生したときに字幕が利用可能になるまで、ファイルの準備に数時間かかることがあるとされています。会議直後に字幕付きで共有する前提のスケジュールは組まないでください。
端末側の権限でつまずく場面
ヘルプには、macOS Sequoiaにアップデートした場合の注意が書かれています。会議で画面共有や録画を開始するときに表示されるダイアログで「許可」をクリックする必要があり、最初のダイアログを見逃した場合はシステム設定を更新する必要があるとされています。Mac の画面録画とシステム音声録音に対するアクセスを、Google Chromeへ許可する形です。
この種の権限は、OSの更新のたびに再確認が必要になることがあります。運用ルールには「会議の5分前に接続テストをする」の1行を入れておくと、当日の権限ダイアログで慌てずに済みます。とくに初めてその端末で録画する人には、事前の1回を必ず踏ませてください。
止まったときの代替を決めておく
会議ツールは、更新やメンテナンスで使えなくなることがあります。Wherebyの利用規約にも、技術的・セキュリティ上・運用上の理由で更新やメンテナンスを行い、その間サービスが利用できなくなる可能性があると記載されています。ピーク時間帯を避けるよう合理的な努力をするとされていますが、可能性そのものは残ります。
| 止まり方 | 代替の手段 | 事前に決めておくこと |
|---|---|---|
| 会議ツール全体が使えない | 電話会議、別ツールの予備アカウント | 誰が代替の招集をかけるか、連絡先の一覧をどこに置くか |
| 特定の参加者だけ入れない | 電話での参加、後日の録画共有 | Webexの Call Me アドオンのような電話経由の参加ができるか |
| 録画が始まらない | 議事録の手書き、後日の再収録 | 録画が必須の会議とそうでない会議の区別 |
| 音声が途切れる | チャットでの補完、資料の事前配布 | 資料を会議前に配る運用 |
右の列が運用ルールに書くべき内容です。左と真ん中は状況の整理であって、決めごとではありません。「誰が代替の招集をかけるか」を決めていないと、全員が待つだけの時間が生まれます。
代替の連絡先一覧を会議ツールの中に置かないことも大事です。ツールが止まったときに参照できないためです。紙、あるいは別のサービスに置いてください。
会議の前・中・後で決める8項目
| 段階 | 決めること | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 前 | 予定を作る担当 | 定例は部署の幹事が作る。臨時は招集者が作る |
| 前 | 資料の配布期限 | 開始24時間前までに共有 |
| 前 | 接続テスト | 初めて録画する端末は事前に1回テストする |
| 中 | 録画する会議の範囲 | 社外との商談と研修は録画。社内定例は録画しない |
| 中 | 録画の開始を宣言する | 開始前に口頭で伝え、同意しない人は退出できると案内する |
| 後 | 録画の移動先と期限 | 会議当日中に共有ドライブへ移す |
| 後 | 保存期間 | 商談は6か月、研修は3年、社内定例は保存しない |
| 後 | 共有範囲の確認 | 社外へ共有したリンクは会議後7日で無効化する |
8項目に絞ったのは、これ以上増えると読まれないためです。細かい作法を並べたルールより、この8項目を全員が知っている状態のほうが、実際の事故は減ります。書いたら会議ツールの中ではなく、社内の共有ドキュメントに置いて、新入社員の初日に渡してください。
議事録と録画のどちらを残すか
録画があれば議事録は要らない、という運用は長続きしません。1時間の会議を見返すのに1時間かかるためです。録画は「後から特定の発言を確認する」ための保険であり、内容を共有する手段としては議事録のほうが早く読めます。
現実的な分担は、議事録に決定事項と担当と期限の3つだけを書き、詳細は録画に任せる形です。議事録が3行で済むなら、会議中に書き切れます。会議後にまとめる時間を取らずに済むので、続きます。
ただし、この分担は録画が確実に残ることが前提です。録画が主催者のドライブにあり、その人しかアクセスできない状態なら、保険として機能しません。図の最後のマス(共有ドライブへ移す)まで実行されて初めて、議事録を短くできます。
四半期に一度、ルールを実態に合わせる
運用ルールは、作った時点が最も実態から遠い文書です。実際に使ってみると、想定していなかった会議の型が出てきます。四半期に一度、次の3点を見て書き直してください。
第一に、ルールで決めた範囲外の会議が増えていないか。「社内定例は録画しない」と決めたのに録画が増えているなら、ルールが実務と合っていない可能性があります。第二に、保存期間を過ぎた録画が消えているか。消えていないなら、消す担当が決まっていないということです。第三に、共有リンクの棚卸しです。社外へ渡したリンクが有効なまま残っていないかを見ます。
書き直すときは、増やすより減らすことを考えてください。守られていない項目は、多くの場合ルールが細かすぎることが原因です。8項目に収まらないなら、その会議の型そのものを見直すほうが早いこともあります。
退職・異動のときに引き継ぐもの
運用ルールで抜けやすいのが、担当者が変わるときの手順です。Web会議まわりで引き継ぐ必要があるのは3つあります。
第一に、定例会議の予定の所有者です。Google Meetでは予定を作成したユーザーが主催者になるため、その人が退職すると主催者不在の予定が残ります。退職前に予定を作り直すか、共同主催者を立てておいてください。第二に、その人のドライブに残っている録画です。共有ドライブへ移す運用にしていれば問題になりませんが、そうでない場合はアカウント削除の前に取り出す必要があります。第三に、契約の管理者権限です。会議ツールの解約や設定変更ができるのは管理者だけなので、管理者を1人にしないでください。
この3つは、退職の手続きチェックリストに入れておく種類の項目です。会議ツールの運用ルールとは別の文書に見えますが、実際には同じ問題です。ルールを作るときに、退職時の項目まで含めて1枚にしておくと抜けません。
ルールを1枚に収める書き方
運用ルールが読まれない最大の理由は、長いことです。会議のたびに参照される文書ではないので、必要になったときに探して読める長さでなければ意味がありません。目安として、A4で1枚に収めてください。
1枚に収めるには、判断の理由を書かないことです。「なぜ録画を共有ドライブへ移すのか」は本稿のような解説記事に書き、ルール本体には「録画は当日中に共有ドライブへ移す。担当は会議の主催者」とだけ書きます。理由が知りたい人は解説を読み、そうでない人は1行だけを読む、という分け方です。
例外の扱いも1行で書きます。「例外は情報システム部門の承認を得る」と書いておけば、想定外の会議が出てきたときに判断を止めずに済みます。例外を最初から列挙しようとすると、それだけで1枚を超えます。
配る先も決めてください。会議ツールの中に置くと、ツールが止まったときに読めません。社内の共有ドキュメントに置き、入社時の配布物にも入れる形が確実です。更新したら更新日を書き、古い版を残さないようにしてください。
まとめ
Web会議の運用ルールは、参加のマナーではなく所有と保管の設計です。Google Meetでは、Googleカレンダーで予定を作成したユーザーが主催者になり、Meetのホームページなどで作成した場合は会議を開始したユーザーまたはコードを生成したユーザーが主催者になります。録画ファイルは主催者のドライブの「Google Meet」フォルダに保存されるため、予定を誰が作るかで録画の置き場所が決まります。
録画の同意を求める設定は既定でオフで、管理者がオンにできます。参加者が録画できるのは主催者に録画権限がある場合のみで、主催者向けの設定をオンにすると参加者は録画や文字起こしの状態を変更できません。録画は合計8時間で自動停止し、全員が退出しても停止します。端末はパソコンかAndroidに限られます。これらを踏まえて、予定を作る担当、録画する会議の範囲、録画の移動先と保存期間、そして退職時の引き継ぎを決めてください。
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公式一次情報
- Google Meet ヘルプ「ビデオ会議を録画する」(主催者の決まり方、保存先、同意設定、8時間の上限、端末の制約の出典)
- Microsoft Teams 会議での役割(記録の開始と停止が役割で分かれることの出典)
- Whereby Terms of Service(メンテナンスによる利用不可の可能性に関する記載の出典)
設定の名称と挙動は改定されます。ルールを配る前に、各社のヘルプで最新の画面と手順をご確認ください。

