シフト管理システムを入れる前に、決めておかなければならないものがあります。労働契約の側の条件です。厚生労働省は2022年1月7日に「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」をまとめ、2026年6月19日に改正しました。ここには、労働条件通知書に何を書くか、シフトの通知と変更についてどんなルールを決めておくことが考えられるかが、条文の根拠つきで並んでいます。システムの設定画面は、この取り決めを写すための場所です。順番を逆にすると、ツールの初期値がそのまま労働条件になってしまいます。
先に要点
- 留意事項が指す「シフト制」は、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間ごとに作成される勤務シフトなどで初めて具体的に確定する形態です。三交替勤務のような従来型の交替勤務は含まれません。
- 労働条件通知書に単に「シフトによる」と記載するのでは足りません。確定している日は労働日ごとの始業終業時刻を書くか、原則の時刻を書いたうえでシフト表をあわせて交付します。
- 休日は、曜日が確定していない場合でも設定にかかる基本的な考え方を明示します。
- シフトの通知の期限と方法、変更の期限と手続は、あらかじめ話し合って定めておくことが考えられる事項として挙げられています。
- 一定期間の最大の日数・時間数・時間帯、目安となる日数、最低限労働する日数も、合意しておく例として示されています。
- 確定したシフトの労働日・労働時間の変更は労働条件の変更に当たるため、双方が合意したうえで行うよう求められています。
厚労省が言う「シフト制」の範囲
まず範囲を確認します。留意事項は冒頭で、対象とする形態をこう定義しています。
労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間(1週間、1か月など。以下同様。)ごとに作成される勤務割や勤務シフトなどにおいて初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような形態
そのうえで、注記で除かれる形態も明示されています。「従前から見られた、いわゆる交替勤務(年や月などの一定期間における労働日数や労働時間数が決まっており、その上で、就業規則等に定められた勤務時間のパターンを組み合わせて勤務する形態)を除きます」という部分です。
つまり、三交替の製造現場のように、月の労働日数と時間数が先に決まっていて、そこに勤務パターンを当てはめていく運用はここで言う「シフト制」ではありません。飲食、小売、介護などで、翌月の希望を集めてから労働日が決まる運用が対象です。自社がどちらなのかで、以下の留意事項の当てはまり方が変わります。

「シフトによる」だけでは明示にならない
労働基準法第15条第1項と労働基準法施行規則第5条により、使用者は労働契約の締結に際して「始業及び終業の時刻」や「休日」等に関する事項を書面で明示しなければなりません。留意事項は、シフト制でここがどう当てはまるかを具体的に書いています。
労働条件通知書等には、単に「シフトによる」と記載するのでは足りず、労働日ごとの始業及び終業時刻を明記するか、原則的な始業及び終業時刻を記載した上で労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等をあわせて労働者に交付するなどの対応が必要です。
対象になるのは「労働契約の締結時点において、すでに始業及び終業時刻が確定している日」です。入社初月のシフトが決まっているなら、その月のシフト表を契約書と一緒に渡す運用が、ここで言う対応にあたります。
| 項目 | 留意事項が求めている対応 | 根拠として挙げられている条文 |
|---|---|---|
| 始業及び終業の時刻 | 確定している日はその日の時刻を明示。労働日ごとに書くか、原則の時刻+一定期間分のシフト表の交付 | 労働基準法第15条第1項、同法施行規則第5条 |
| 休日 | 定まっていれば明示。曜日等が確定していない場合は、休日の設定にかかる基本的な考え方を明示 | 労働基準法第35条、同法施行規則第12条の2第2項 |
| 有期労働契約の更新上限 | 通算契約期間または更新回数の上限があれば、締結時と更新のたびに明示 | 労働基準法施行規則第5条第1項第1号の2 |
| 無期転換 | 通算5年を超えて更新される場合、申込みができる旨と転換後の労働条件を都度明示 | 労働基準法施行規則第5条第5項・第6項 |
| 明示の方法 | 書面が原則。労働者の希望があれば電子メールの送信等の電子的な方法も可 | 労働基準法施行規則第5条第4項 |
休日については、具体的な曜日が決まっていなくても逃げ切れません。留意事項は、労働基準法第35条が毎週少なくとも1回または4週間を通じて4日以上の休日を求めていることを挙げ、「最低でもこうした内容を満たすような考え方を明示する必要があります」としています。4週4日の形を取る場合は、4週間の起算日を就業規則等で明らかにしておくことも必要です。
就業規則に「シフトによる」とだけ書いた場合
常時10人以上の労働者を使用する使用者には、始業及び終業の時刻や休日に関する事項について就業規則を作成し、労働基準監督署へ届け出る義務があります(労働基準法第89条第1号等)。留意事項は、シフト制労働者についての書き方にも触れています。
就業規則上「個別の労働契約による」「シフトによる」との記載のみにとどめた場合は、作成義務を果たしたことにならないとされています。一方で、基本となる始業及び終業の時刻や休日を定めたうえで「具体的には個別の労働契約で定める」「具体的にはシフトによる」と定めることは差し支えないとも書かれています。順序の問題で、基本形を先に置けば個別化は可能です。
1か月単位の変形労働時間制を使う場合は、就業規則の要求が一段重くなります。留意事項の注記は、変形労働時間制導入時の具体的な労働日や各日の始業及び終業時刻を定めておく必要があるとし、月ごとにシフトを作成する場合は「全ての始業及び終業時刻のパターンとその組み合わせの考え方、シフト表の作成手続及びその周知方法等」を就業規則に定めなければならないとしています(昭和63年3月14日基発150号参照)。シフト作成の手続そのものが就業規則の記載事項になります。
シフトの作成と変更のルールを決めておく
留意事項は「労働契約に定めることが考えられる事項」として、シフトの作成と変更の手続を挙げています。義務ではなく、労働紛争を防ぐための推奨ですが、挙げられている項目はそのままシステムの設定項目に対応します。
留意事項が例示しているルール
作成に関するルール
シフト表などの作成に当たり、事前に労働者の意見を聴取すること。
確定したシフト表などを労働者に通知する期限や方法。
変更に関するルール(期間開始前)
確定したシフト表における労働日、労働時間等の変更を使用者または労働者が申し出る場合の期限や手続。
変更に関するルール(期間開始後)
使用者または労働者の都合で、確定したシフト表における労働日、労働時間等を変更する場合の期限や手続。
前提として押さえておきたいのは、留意事項が「基本的に、一旦シフトを確定させた後に当該シフト上の労働日や労働時間等を変更することは、労働条件の変更に該当します」と明言していることです。労働契約法第8条を引いたうえで、確定した労働日・労働時間の変更は双方が合意して行うよう求めています。確定後の変更は、管理者が画面上で直せるかどうかとは別の問題だということです。
日数の上限・下限・目安を決めておく
もうひとつ、留意事項が「あらかじめ使用者と労働者で話し合って合意しておくことが考えられる」としているのが、労働日数と労働時間の幅です。例として挙げられているのは次の形です。
留意事項に例示されている取り決めの形
- 上限。一定の期間において、労働する可能性がある最大の日数、時間数、時間帯。例として「毎週月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する」が挙げられています。
- 目安。一定の期間において、目安となる労働日数、労働時間数。例として「1か月○日程度勤務」「1週間当たり平均○時間勤務」が挙げられています。
- 下限。一定の期間において最低限労働する日数、時間数。例として「1か月○日以上勤務」「少なくとも毎週月曜日はシフトに入る」が挙げられています。
この「目安となる労働日数」は、2026年6月の改正で年次有給休暇の計算にも結びつきました。所定労働日数を算出しがたい場合に、実績から計算した付与日数より目安の日数で計算した付与日数のほうが多くなるときは、目安の日数を使って算出しても差し支えないという取扱いが追記されています。決めておくことが、後の実務を楽にする例です。
留意事項は最後に、これらを合意した場合は「当事者間でできる限り書面により確認しておくことが望まれます」としています。労働契約法第4条第2項が根拠です。
募集の段階でも同じ考え方が要る
労働者の募集に当たっては、業務内容・賃金・労働時間等の労働条件を明示することが必要です(職業安定法第5条の3第1項および第2項)。留意事項は「求人票等を記載する時点においても、前記2の⑵、⑷の趣旨を踏まえた記載とすることが望まれます」としています。契約時に書けないことを求人票だけ曖昧にしておく、という運用は想定されていません。
募集時の労働条件を労働契約の締結までに変更する場合は、変更内容の明示が必要です(職業安定法第5条の3第3項)。「週3日程度」で募集して実際は週1日しか入れない、という状態は、ここと休業手当の両方に関わってきます。

決めた条件を、どのシステムならそのまま設定できるか
ここまでの取り決めは、シフト管理システムの機能とほぼ一対一で対応します。たとえば「通知する期限」を決めたなら、締切前のリマインドが自動で飛ぶかどうかが運用の成否を分けます。「連勤させない」と決めたなら、アラートで止まるかどうかです。
| 決めておく条件 | 対応している機能として公開されているもの |
|---|---|
| 希望の聴取と提出の期限 | らくしふはLINEで最大5回まで自動リマインド、提出は4か月先まで可能。Airシフトは希望シフト提出の自動リマインドを掲載 |
| 確定シフトの通知 | oplusはメガホン(メッセージ一斉送信)とコメント機能。らくしふは確定シフト通知をLINE・LINE WORKS・専用アプリで案内 |
| 確定後の変更の手続 | らくしふは確定後も変更でき、対象スタッフのみに再度確定通知を送れると回答。シフオプは変更履歴の管理を含む運用をCSVで勤怠へ連携 |
| 連勤・インターバルの上限 | oplusは自動シフト作成オプションに出勤インターバルと連勤アラート。らくしふは労務アラート機能を勤務形態ごとにカスタマイズ可能と回答 |
| 変形労働時間制への対応 | ShiftMAXは1か月単位・1年単位の変形労働時間制に対応、みなし労働制・フレックスタイム制にも対応と回答 |
| 有給休暇の管理 | oplusは有給休暇管理オプション(50円/ユーザー)。ShiftMAXは有休管理が初期15万円+月50円/人のオプション。らくしふは資料での案内 |
各サービスの金額と条件は、クラスターの詳細ページにまとめています。Airシフト、シフオプ、oplus、らくしふ、ShiftMAXの順に、公式サイトで確認できた記載だけを並べています。
トラブルになったときの相談先
留意事項は「その他」の章で、相談先を具体的に案内しています。シフトに関するトラブルを未然に防ぎたい場合や、「シフトが以前より少なくなった」「シフトを一方的に減らされた・増やされた」といったトラブルが生じた場合の解決方法のひとつとして、個別労働紛争解決制度が挙げられています。窓口は、都道府県労働局や各労働基準監督署内などに設置されている総合労働相談コーナーです。
使用者側から見れば、ここに持ち込まれる前に決着をつけるための装置が、この留意事項に並ぶ取り決めだということになります。
このページの要点
1. 「シフト制」の定義は締結時点で労働日・労働時間が確定していない形態。三交替勤務は含まない。
2. 労働条件通知書に「シフトによる」だけでは足りない。確定している日は時刻を書くか、シフト表を添えて交付する。
3. 通知の期限・方法、変更の期限・手続、日数の上限と下限は、話し合って決めておくことが考えられる事項として例示されている。
4. 確定したシフトの変更は労働条件の変更。双方の合意で行う。
決めた条件を設定できるサービスを探すなら、5サービスの料金と条件を同じ軸で並べたハブページから見てください。
よくある質問
- 労働条件通知書に「シフトによる」と書くのは違法ですか。
- 留意事項は、契約の締結時点ですでに始業及び終業時刻が確定している日について「単に『シフトによる』と記載するのでは足りず」としています。労働日ごとの時刻を明記するか、原則的な時刻を記載したうえで一定期間分のシフト表をあわせて交付する対応が必要とされています。
- 休日の曜日が決まっていない場合はどう書きますか。
- 休日の設定にかかる基本的な考え方を明示します。労働基準法第35条が毎週少なくとも1回または4週間を通じて4日以上の休日を求めているため、最低でもこれを満たす考え方を示す必要があります。4週4日とする場合は、4週間の起算日を就業規則等で明らかにしておきます。
- 確定したシフトを会社の都合で変更できますか。
- 留意事項は、確定後の労働日や労働時間等の変更は労働条件の変更に該当するとしたうえで、労働契約法第8条を引き、使用者と労働者の双方が合意したうえで行うよう求めています。あわせて、変更を申し出る場合の期限や手続をあらかじめ決めておくことが例示されています。
- 就業規則にはどこまで書けばよいですか。
- 「個別の労働契約による」「シフトによる」との記載のみでは作成義務を果たしたことにならないとされています。基本となる始業及び終業の時刻や休日を定めたうえで、具体的には個別の労働契約やシフトによる旨を定めることは差し支えないという整理です。
- この留意事項はいつ改正されましたか。
- 令和4年(2022年)1月7日に作成され、令和8年(2026年)6月19日に改正されています。改正では、所定労働日数に応じた比例付与を含む年次有給休暇の付与日数、所定労働日数を算定しがたい場合の取扱い、年次有給休暇取得時に支払われる賃金の計算方法が追記されました。
このページで確認した一次情報(2026年10月6日)
- 厚生労働省「いわゆる『シフト制』について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22954.html
- 厚生労働省「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(令和4年1月7日、改正令和8年6月19日) https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001713615.pdf

