シフト制の年次有給休暇と休業手当|所定労働日数が決まっていなくても付与する。比例付与の表と実績からの算出方法

シフト制の年次有給休暇の要点をカードで並べたアイキャッチ。比例付与の対象は週4日以下かつ週30時間未満であること、所定労働日数が出せない場合は実績を2倍すること、目安の日数は実績を上回るときだけ使えること、休業手当は平均賃金の6割以上であることを示している

シフト制で働く人の年次有給休暇は、計算のしかたが正社員と同じではありません。付与日数が所定労働日数で変わるうえ、そもそも所定労働日数が決まっていない契約があるからです。厚生労働省は2026年6月19日に「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」を改正しました。改正後の本文には、比例付与の日数表、所定労働日数を算定しがたい場合の取扱い、取得日の賃金の計算方法が加わっています。2026年10月版の事業者向けリーフレットには、具体的な数字で計算した例も載っています。シフトを減らしたときの休業手当や、保険の加入基準とあわせて整理します。

先に要点

  • 発生要件は雇入れの日から6か月間継続勤務、全労働日の8割以上出勤。シフト制でも同じです。
  • 週の所定労働日数が4日以下かつ週の所定労働時間が30時間未満なら比例付与。日数表が別になります。
  • 所定労働日数を決めていないことを理由に付与しないのは認められません。算出しがたい場合は実績から計算します。
  • 「目安となる所定労働日数」で計算してよいのは、実績から計算した日数を上回るときだけです。
  • 時季変更権を使えるのは事業の正常な運営を妨げる場合に限られ、「代わりの人がいないから」「忙しいから」では足りません。
  • 使用者の責めに帰すべき事由で休業させたときは、平均賃金の6割以上の休業手当が必要です(労働基準法第26条)。

シフト制でも年次有給休暇は発生する

留意事項は、付与の要件をシフト制でもそのまま当てはめています。雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤したときは、労働基準法第39条第1項・第2項の日数の年次有給休暇を付与しなければなりません。

契約期間が6か月未満でも、更新されて6か月以上に及んでいる場合は継続勤務の要件を満たします。短期の契約を繰り返している運用でも逃れられないという意味です。なお、8割以上出勤していない労働者に任意で付与することは差し支えないとされています。

リーフレットは「全労働日」について、一般的にはその期間内におけるシフト表で確定した所定労働日などの全日数だと注記しています。

厚生労働省「『シフト制』で働く場合の年次有給休暇について(使用者の方等向けリーフレット)」の公式画面キャプチャ
出典:厚生労働省「『シフト制』で働く場合の年次有給休暇について(使用者の方等向けリーフレット)」(2026年10月、都道府県労働局・労働基準監督署)。付与要件、付与日数の2つの表、所定労働日数の算出が難しい場合の対応、申請・取得、取得時の賃金計算例が掲載されている(2026年10月6日取得)

付与日数の表は2つに分かれる

日数の表は、週の所定労働日数と週の所定労働時間で2つに分かれます。ひとつ目は、週の所定労働日数が5日以上または週の所定労働時間が30時間以上の場合です。

①週所定労働日数が5日以上または週所定労働時間が30時間以上の場合
継続勤務年数 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

ふたつ目が比例付与です。週の所定労働日数が4日以下かつ週の所定労働時間が30時間未満の労働者が対象で、労働基準法第39条第3項が根拠です。アルバイト中心のシフト運用では、こちらを使う人のほうが多くなります。

②週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の場合(比例付与)
週の所定労働日数 1年間の所定労働日数 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
4日 169日〜216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日〜168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日〜120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日〜72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

留意事項は、ここで参照する「所定労働日数」を基準日(継続勤務6か月経過日から1年ごとの各期間の初日)に予定されている1週間の所定労働日数とし、週以外の期間で定まっている場合は1年間の所定労働日数とすると定義しています。

所定労働日数が出せないときの計算

シフト制の実務で詰まるのがここです。留意事項ははっきりと書いています。

あらかじめ所定労働日数を定めていない場合に、そのことを理由にシフト制労働者に年次有給休暇を付与しないことは認められません。

そのうえで、算出しがたい場合に使える日数を2つ示しています。雇入れ6か月経過後の付与では「雇入れから6か月間の労働日数の実績を2倍した日数」、雇入れ1年6か月経過後以降では「前年の労働日数の実績」です。これを1年間の所定労働日数とみなして、比例付与の表に当てはめます。

算出しがたい場合の手順(留意事項とリーフレットの記載)

  1. 実績の日数を出す。初回なら雇入れから6か月間の労働日数、2回目以降なら前年1年間の労働日数を数えます。
  2. 1年間の所定労働日数とみなす。初回は実績を2倍します。2回目以降は前年の実績をそのまま使います。
  3. 比例付与の表に当てはめる。1年間の所定労働日数の区分から、継続勤務年数に応じた付与日数を読みます。
  4. 目安がある場合だけ比較する。「目安となる労働日数」を定めているときは、それで計算した日数が実績で計算した日数を上回る場合に限り、目安を使えます。

目安を使えるのは実績を上回るときだけ

リーフレットには数字の入った例が2つ載っています。目安が有利に働く場合と、そうでない場合の両方です。

リーフレットの計算例(2026年10月版)
場面 実績で計算 目安で計算 結論
例1:雇入れ6か月経過後
実績78日、目安は「1週4日程度勤務」
78日×2=156日。比例付与の表の「121日〜168日」に該当し、付与日数は5日 週の所定労働日数を4日とみなし、付与日数は7日 目安が実績を上回るため、7日と算出してよい
例2:雇入れ1年6か月経過後
前年実績96日、目安は「1週1日程度勤務」
96日を1年間の所定労働日数とみなし、「73日〜120日」に該当して付与日数は4日 週の所定労働日数を1日とみなすと、付与日数は2日 目安が実績を下回るため、目安では算出できない。実績の4日になる

労働者に有利な側を取る、という整理です。契約書に「1週4日程度」と書いておくことが、結果として付与日数を増やす方向に働く場合があります。前回の記事で触れた労働契約で決めておく事項が、ここで効いてきます。

所定労働日数と実際の労働日数が離れないようにすることも求められています。留意事項は「実際に働く日数と、所定労働日数が乖離しないようにすることが望まれます」としたうえで、「使用者の都合で一方的に所定労働日数を増減させることは認められません」と明記しています。

年休を取った日の賃金の計算

労働者が年次有給休暇を取得した日について、使用者は就業規則等で定めた一定の賃金を支払わなければなりません(労働基準法第39条第9項)。シフト制で問題になるのは、その日の所定労働時間が日によって違うことです。

留意事項は、時間給の場合は「その金額に、当該労働者の年次有給休暇取得日における所定労働時間として定められている労働時間を乗じた金額」、日給の場合は「その金額」としています。リーフレットは、一般的にはシフト表で確定した所定労働時間を指すと注記しています。

リーフレットの賃金計算例(時給1,500円、年休取得日の所定労働時間5時間、直近3か月の暦日数92日・労働日数60日のうち5時間の日が20日、8時間の日が40日)

通常の賃金

1,500円×5時間=7,500円

平均賃金①

1,500円×(5時間×20日+8時間×40日)÷92日=6,847.82円

平均賃金②(最低保障額)

1,500円×(5時間×20日+8時間×40日)÷60日×0.6=6,300円

平均賃金は①と②を比較して大きいほうが採用されます。この例では①の6,847.82円です。どの方式で支払うかは就業規則等の定めによります。長い日に年休を当てられるか短い日に当てられるかで金額が変わるため、運用のルールを先に決めておかないと不公平感が出ます。

「代わりがいないから」は変更の理由にならない

年次有給休暇は、原則として労働者の請求する時季に与えなければなりません(労働基準法第39条第5項)。リーフレットは、シフト制で起きがちな運用を名指しで否定しています。

「シフトの調整をして働く日を決めたのだから、その日に年休は使わせない」といった取扱いは認められません。

時季変更ができるのは「事業の正常な運営を妨げる場合(同一期間に多数の労働者が休暇を希望したため、その全員に休暇を付与し難い場合など)」に限られます。「単に、『代わりの人がいないから』、『忙しいから』というだけでは、労働者の請求した日に年次有給休暇を使わせないといった取扱いはできません」と書かれています。

また、法定の付与日数が10日以上である場合は、そのうち5日について基準日から1年以内に時季を定めて取得させなければなりません(労働基準法第39条第7項)。比例付与でも、週4日で3年6か月以上勤務していれば10日に達します。

厚生労働省「『シフト制』で働く場合の年次有給休暇について(労働者の方向けリーフレット)」の公式画面キャプチャ
出典:厚生労働省「『シフト制』で働く場合の年次有給休暇について(労働者の方向けリーフレット)」(2026年10月)。所定労働日数を定めていない場合でも年次有給休暇の取得は可能であることと、時季変更が認められる範囲が示されている(2026年10月6日取得)

シフトを減らしたときの休業手当

労働基準法第26条は、使用者の責めに帰すべき事由により労働者を休業させた場合、休業期間中に平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければならないと定めています。留意事項は、シフト制労働者の場合もこれが適用されるとしています。

「使用者の責に帰すべき事由」は、故意や過失に限られず、使用者側に起因する経営、管理上の障害なども含まれます。ただし不可抗力による場合は当たりません。留意事項は、不可抗力に該当するための要素を2つ挙げています。

不可抗力に当たるかの判断(留意事項の記載)

  • 要素①その原因が事業の外部より発生した事故であること。
  • 要素②事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること。
  • ②を満たすには。使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしていると言える必要があるとされ、判断材料として「自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか」「労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか」が挙げられています。

あわせて、無期転換の申込みを理由にシフトの頻度を一方的に減らすことのないようにという注意も書かれています(労働契約法第18条の説明部分)。待遇差についても、「通勤手当の支給やシフト減に伴う手当の支払に当たっては、不合理な待遇差に該当しないように留意してください」とされています。

保険の加入はシフトの時間数で決まる

留意事項の最後の章は、社会保険と労働保険です。シフトの増減が、加入の有無を動かします。

シフト制労働者の保険の加入基準(留意事項の記載)
制度 基準 注意点
労災保険 労働者を使用する事業は適用事業。シフト制労働者も給付の対象 個人経営の農林水産業で労働者5人未満の事業の一部は暫定的に任意適用
雇用保険 週の所定労働時間20時間以上、かつ31日以上引き続き雇用されることが見込まれること 加入条件の週の所定労働時間は、令和10年10月1日から10時間以上に変更される
健康保険・厚生年金保険(4分の3以上) 適用事業所で、週の所定労働時間および1か月の所定労働日数が同様の業務の正社員の4分の3以上 —
健康保険・厚生年金保険(短時間労働者) 週の所定労働時間20時間以上、月額賃金8.8万円以上、学生でない、従業員51人以上の企業(または50人以下で労使合意)の4要件を満たす —

雇用保険の週所定労働時間の判断について、留意事項は丁寧に書いています。労働契約書等に基本的な考え方が定められている場合はそれに沿って判断し、そうした定めがなくシフトが直前にならないと判明しない場合や、契約書の内容と実際の勤務時間に乖離がある場合は、実際の勤務時間に基づき平均の労働時間を算定するという扱いです。シフトの減少で臨時的・一時的に20時間を下回っても直ちに被保険者でなくなることはありませんが、恒常的に下回る見込みとなった時点で被保険者でなくなります。

離職の場面にも記載があります。「具体的な就労日数が労働条件として明示されている一方で、シフトを減らされた場合」や「契約更新時に従前の労働条件からシフトを減らした労働条件を提示されたため、更新を希望せずに離職した場合」は、特定理由離職者または特定受給資格者と認められ、給付制限を受けないほか基本手当の所定給付日数が手厚くなる場合があるとされています。

取得しやすくするための取り組み例

事業者向けリーフレットの最後は、現場の悩みとそれに対する取り組み例の対応表になっています。制度の説明ではなく運用の話なので、シフト管理システムの設定に落としやすい部分です。

リーフレットが挙げている取り組み例

  • 付与日と残日数を個別に知らせる。労働契約の締結や更新に際して、年次有給休暇の付与日、残日数、申請の方法を個別に通知する。給与明細やシフトの希望を提出する申請用紙に残日数を記載して周知する。
  • シフト案を早く示す。相当程度余裕をもってシフト案を示すことで、休暇の予定を立てやすくする。
  • 交替できる人を探しやすくする。労働する可能性がある最大の日数(例:月曜〜金曜は勤務可能)についても、労働契約の締結の際に労働者ごとに意向を確認する。

リーフレットは「年次有給休暇の取得しやすい環境の整備は、人材確保や人材定着に資する魅力ある職場づくりの観点から有効という現場の声もあります」と締めくくっています。問い合わせ先は、シフト制労働契約については総合労働相談コーナー、年次有給休暇については労働基準監督署です。

システム側で何を持たせるか

ここまでの要求を人手で回すと、残日数の管理と、年休を取った日の賃金の計算が負担になります。シフト管理システムの有給休暇管理機能は、まさにこの2点を引き受ける部分です。ただし5サービスとも、標準で付いているとは限りません。

有給休暇管理の扱い(各公式サイトの記載)
サービス 有休管理の位置づけ 公開されている費用
oplus オプションの有給休暇管理機能。有休付与日数の設定、週所定労働日数の設定、年次有給休暇の設定 50円/ユーザー
ShiftMAX オプションの有休管理。半日単位や時間単位の有休にも対応と回答 初期15万円+月50円/人
らくしふ 勤怠機能がオプション。詳細はサービス紹介資料での案内 非公開
Airシフト 公開ページで確認できたのは打刻・概算人件費・勤怠記録の保管まで 同じ料金に含まれる範囲として掲載
シフオプ 打刻機能を持たず、勤怠連携はCSVの出力と取り込み 勤怠側で管理する前提

各サービスの詳細は、oplus、ShiftMAX、らくしふ、Airシフト、シフオプのページにまとめています。

このページの要点

1. 所定労働日数を決めていないことを理由に年休を付与しないのは認められない。実績から計算する。

2. 「目安となる所定労働日数」で計算してよいのは、実績で計算した日数を上回るときだけ。

3. 時季変更権は「代わりがいない」「忙しい」では使えない。

4. 雇用保険の週所定労働時間の要件は令和10年10月1日から10時間以上に変わる。

有休管理まで1本で持つか、勤怠システム側に寄せるかで選び方が変わります。5サービスの料金と条件はハブページにまとめています。

シフト管理システム比較5選を見る

よくある質問

所定労働日数を契約で決めていない場合、年休は与えなくてよいですか。
認められません。留意事項は「あらかじめ所定労働日数を定めていない場合に、そのことを理由にシフト制労働者に年次有給休暇を付与しないことは認められません」と明記しています。算出しがたい場合は、雇入れ6か月経過後なら6か月間の労働日数の実績を2倍した日数、1年6か月経過後以降なら前年の労働日数の実績を、1年間の所定労働日数とみなして計算します。
「1週4日程度」と決めてあれば、その日数で計算してよいですか。
実績から計算した付与日数を上回る場合に限って使えます。リーフレットの例では、実績から5日と算出されるところ、目安の「1週4日程度勤務」を使うと7日になるため、7日と算出してよいとされています。逆に目安のほうが少なくなる例では、実績の日数を使うことになります。
年休を取った日の賃金はいくらになりますか。
就業規則等の定めにより、「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」または「平均賃金」などで支払います。時給制の場合、通常の賃金はその日の所定労働時間に時給を掛けた金額です。平均賃金は、過去3か月分の賃金総額を暦日数で除した金額と、労働日数で除した金額の6割(最低保障額)のいずれか大きいほうです。
忙しい日に年休を申請されたら断れますか。
断れません。時季変更ができるのは事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。リーフレットは「単に、『代わりの人がいないから』、『忙しいから』というだけでは、労働者の請求した日に年次有給休暇を使わせないといった取扱いはできません」としています。
シフトを減らした場合に休業手当は必要ですか。
使用者の責めに帰すべき事由による休業であれば必要です。労働基準法第26条により、休業期間中、平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければなりません。不可抗力に当たるかどうかは、事業の外部から発生した事故であること、通常の経営者としての最大の注意を尽くしても避けられない事故であることの両方で判断されます。
雇用保険の加入基準はいつ変わりますか。
留意事項の注記によれば、雇用保険への加入条件となる1週間の所定労働時間は、令和10年10月1日から10時間以上に変更されます。

このページで確認した一次情報(2026年10月6日)

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